60代半ばを過ぎた私も、数年前までは毎日が不安でいっぱいでした。夫の年金だけでは家計は赤字寸前。自分の年金支給はまだ先で、この先どうなるのかと、夜中に何度も目が覚める日々。「このままでは、大好きな夫にまで負担をかけてしまう…」そんな焦燥感が、いつも心の奥底にありました。
節約はできる限りしているつもりでした。特売品を求めてスーパーをはしごし、電気代や水道代もこまめにチェック。でも、いくら切り詰めても、月に数万円の赤字は埋まりません。体力には自信がなく、若い頃のように立ちっぱなしの仕事はもう無理。ましてや、パソコンなんて触ったこともない私に、一体何ができるというのでしょう。諦めにも似た感情が、私を支配していました。
「もう無理なのかな…」と、ため息ばかりついていたある日、長年の友人であるファイナンシャルプランナー(FP)の田中由美さんと久しぶりに会う機会がありました。由美さんは私の顔を見るなり、「最近、元気がないみたいだけど、何かあったの?」と心配そうに声をかけてくれました。私はこれまでの悩みを堰を切ったように話し始めました。
由美さんは私の話をじっと聞いてくれ、静かにこう言いました。「ねえ、諦めるのはまだ早いよ。体力やパソコンスキルがなくても、60代から輝ける収入の道は必ずあるんだから」。その言葉は、まるで暗闇に差し込む光のようでした。由美さんは続けて、私のようなシニア世代が抱える経済的な不安は決して珍しいことではないと教えてくれました。厚生労働省のデータでも、高齢者の就労ニーズは高まっているのに、なかなか自分に合った仕事が見つからないという声が多いのだそうです。
由美さんのアドバイスは、私の凝り固まった常識を打ち破るものでした。「まずは、自分の『得意』や『好き』を書き出してみて。家事や育児、趣味、人とのコミュニケーション…何でもいいんだよ。それが、あなただけの『強み』になるから」。私は半信半疑ながらも、言われた通りに書き出してみました。料理、裁縫、庭いじり、ご近所さんとの世間話…。
次に由美さんが勧めてくれたのは、地域の「シルバー人材センター」への相談でした。正直、私は「シルバー人材センターなんて、もっと体力のある人が行くところ」という先入観がありました。しかし由美さんは、「体力的な負担が少ない仕事や、パソコンスキルが不要な仕事もたくさんあるんだよ。例えば、地域の見守り活動とか、簡単な家事代行、手芸品の内職、幼稚園の読み聞かせボランティアから発展して謝礼をもらうケースもあるんだ」と具体例を挙げてくれました。
私は由美さんの言葉に背中を押され、勇気を出してシルバー人材センターの門を叩きました。担当の方がとても親身に話を聞いてくださり、私の「得意」や「好き」を活かせる仕事を一緒に探してくれたのです。そこで紹介されたのは、週に2、3回、近隣の高齢者宅を訪問して話し相手になったり、簡単な買い物代行をする「見守り・生活支援」の仕事でした。これはまさに、私が人と話すのが好きで、お世話好きな性格にぴったりの仕事だったのです。
最初のうちは不安もありましたが、実際に始めてみると、感謝される喜びが何よりのやりがいになりました。お話し相手の方から「あなたが来てくれると、部屋が明るくなるわ」と言われた時は、本当に胸がいっぱいになりました。そして何より、月に3万円から5万円の収入が、私の心に大きなゆとりをもたらしてくれました。夫に頼らず、自分の力で家計を支えているという自信。夫婦の会話も増え、以前のようなピリピリした雰囲気はなくなりました。「私にも、まだできることがあったんだ!」そう心から思えるようになりました。
60代からの収入アップ、よくある疑問を解決!
- Q1: パソコンが苦手でも本当に仕事は見つかりますか?
- A1: はい、ご安心ください。シルバー人材センターや地域の就労支援では、パソコンスキルを必要としない仕事も数多く紹介されています。例えば、清掃、調理補助、見守り、手作業の内職など、体力的な負担が少ないものも多いです。FPの田中由美さんも、「デジタルスキルよりも、あなたの『人柄』や『経験』が活きる仕事はたくさんある」と言っていました。
- Q2: 体力に自信がないのですが、どんな仕事ならできますか?
- A2: 無理のない範囲でできる仕事を選びましょう。座ってできる軽作業や、短時間・短日勤務の仕事がおすすめです。地域のコミュニティサロンでの受付、施設での簡単な見守り、自宅でできる手芸品の内職など、選択肢は多様です。まずは地域の支援機関で相談し、ご自身の体調を考慮した仕事を探すことが大切です。
- Q3: 月に3〜5万円程度でも、年金に影響はありますか?
- A3: 一定の収入を超えると年金が減額される場合がありますが、月3〜5万円程度の収入であれば、多くの場合、年金に大きな影響はありません。ただし、個々の状況によって異なりますので、正確な情報は年金事務所や地域の社会保険労務士にご相談ください。田中由美さんも、「事前に専門家に確認することが安心への第一歩」と強調していました。
諦めないで!新しい自分を見つける「セカンドキャリア」という旅
あの時の私と同じように、今、経済的な不安や「自分にはもう何もできない」という思いに囚われている方がいるなら、どうか諦めないでください。60代からの人生は、新しい自分を見つける「セカンドキャリア」という名の旅の始まりです。体力やパソコンスキルがなくても、長年培ってきたあなたの経験や人柄は、何物にも代えがたい「強み」になります。
まずは、あなたの「好き」や「得意」を書き出してみることから始めてみませんか。そして、地域のシルバー人材センターや就労支援センターに、一歩踏み出して相談してみてください。私のように、きっとあなたにぴったりの「輝ける場所」が見つかるはずです。不安な時は、一人で抱え込まず、専門家の力を借りることも大切です。あなたの新しい一歩が、明るい未来へと繋がることを心から願っています。
この記事を書いた人
桜井 恵子 | 60代 | シニア向けライフスタイル webライター
60代半ばの主婦として、夫の年金だけでは生活が厳しいという現実を経験。パソコンが苦手で体力にも自信がない中、FPの友人からのアドバイスをきっかけに、体力・PCスキル不要の仕事で月3〜5万円の収入を得る方法を見つけました。自身の経験を活かし、同じ悩みを持つシニア世代が、年齢を重ねても自分らしく輝けるヒントを発信しています。

