あれ、お父さん、どうしちゃったの…?帰省して気づいた父の異変
先日、約1年ぶりに実家に帰省したときの話、聞いてもらえませんか?
駅まで迎えに来てくれた父の車に乗り込んで、まず感じたこと。
「あれ、お父さん、こんなに口数少なかったっけ…?」
昔は仕事の愚痴だとか、新しく買ったゴルフの話だとか、良くも悪くもマシンガンのように話してきた父が、なんだか静かなんです。
家についても、ソファに座ってぼーっとテレビを見ている時間がやけに長い。
母が「あなた、お茶淹れたわよ」と声をかけても、
「…ん、ああ。」
と、気のない返事。
夜、母にこっそり聞いてみました。
「お父さん、どうしちゃったの?なんだか元気なくない?」
すると母は、待ってましたとばかりに溜息をついてこう言ったんです。
「定年してから、ずーっとあんな感じなのよ…」
趣味探しという名の迷路。なぜ父の心は晴れないのか?
母の話によると、父も最初は色々やろうとしていたらしいんです。
「時間ができたから」と、昔やっていた釣りを再開してみたり。
地域のゴルフコンペに参加してみたり。
近所の市民農園を借りて、野菜を作り始めたり。
でも、どれも長続きしない。
「なんか、違うんだよなぁ…」
そう呟いては、結局、家のソファに戻ってきてしまう。
ただの「暇つぶし」では埋まらない心の穴
最初は私も、「せっかく時間があるのにもったいないなぁ」なんて、軽く考えていました。
でも、父の様子を見ているうちに、これは単なる「暇でやることがない」という問題じゃないんだって、気づき始めたんです。
だって、あれだけ多趣味だった父が、何をやっても楽しそうじゃない。
まるで、分厚いガラスの向こう側で、世の中を眺めているような…。
そんな、もどかしい疎外感みたいなものが、父の背中から漂っていました。
父が本当に失くしてしまったもの
きっかけは、父が書斎を片付けていた時のこと。
昔使っていたであろう仕事の資料や、使い込まれた手帳を整理しながら、父がほんの一瞬だけ、昔の「仕事人の顔」に戻ったように見えたんです。
その横顔を見て、私はハッとしました。
そうだ。
お父さんが失くしてしまったのは、「時間をつぶすための趣味」じゃない。
会社という組織の中で、
「〇〇部長」として、部下を導き、
「取引先の〇〇さん」として、頼りにされ、
一家の大黒柱として、家族を支える…。
そういう「役割」そのものだったんだ、と。
「誰かの役に立っている」という実感の喪失
考えてみれば当たり前ですよね。
私たちは、誰かに必要とされたり、自分の仕事が誰かの役に立っていると感じられたりすることで、自分の存在価値を実感できる生き物なんです。
父にとって、仕事は単なる金儲けの手段じゃなかった。
40年間、人生のほとんどを捧げてきた「自分そのもの」だったはず。
それを突然、定年という節目で、社会から「もうあなたの役割はありませんよ」と、バッサリ切り離されてしまった。
その喪失感は、私たちが想像するよりも、ずっとずっと大きいものだったんです。
( ゚д゚ )…!
これに気づいた時、私は正直、絶句しました。
今まで「定年したら悠々自適でいいな」なんて思っていた自分が、恥ずかしくなりました。
解決策は「趣味探し」じゃない。たった一つのシンプルな答え
「お父さん、昔さ、〇〇の仕事でこんなことしてたって言ってたよね。あれって、すごい社会の役に立ってたんだね」
書斎にいる父に、何気なくそう話しかけてみました。
すると、父は一瞬驚いたような顔をして、でも、少し照れくさそうに、そして嬉しそうに、昔の仕事の話をぽつりぽつりと始めてくれたんです。
その時の父の目…!
久しぶりに見た、活き活きとした力強い目でした。
そこで私は確信しました。
\父に必要なのは、これだ!/
定年後の孤独を解決する鍵は、「暇を潰すための趣味」を探すことじゃない。
自分のこれまでの経験や知識を活かして、
もう一度「誰かの役に立つ」という実感を取り戻すこと。
新しい「役割」を見つけること。
これに尽きるんだ、と。
【比較】定年後の活動、あなたに必要なのはどっち?
多くの人が陥りがちな「趣味探し」と、私が見つけた「役割探し」。
その違いを表にしてみました。
| 比較項目 | 😭 暇つぶしの「趣味探し」 | 😊 生きがいにつながる「役割探し」 |
|---|---|---|
| 目的 | 自分の時間を消費すること | 自分の経験を社会に還元すること |
| 動機 | 「何かしないと」という焦り | 「誰かの役に立ちたい」という貢献意欲 |
| 得られるもの | 一時的な楽しさ | 深い満足感と、人との繋がり |
| 心の状態 | 疎外感、物足りなさが残ることも | 自己肯定感、生きがいが満たされる |
| 具体例 | 一人でやるゴルフ、釣り | 地域の子供に勉強を教える、経験を活かしたアドバイザー |
新しい「役割」の見つけ方【今日からできる3ステップ】
「でも、今さら新しい役割なんて言われても…」
そう思う方もいるかもしれません。
大丈夫です。何も、昔のようにバリバリ働く必要なんてないんです。
本当に些細なことでいい。
「ありがとう」って言ってもらえる。
そんな小さな一歩からでいいんです。
ステップ1:自分の「お宝」を棚卸しする
まずは、あなたがこれまで培ってきた経験やスキルという名の「お宝」を、全部書き出してみましょう。
- 仕事で身につけた専門知識(経理、営業、技術など)
- 人に教えるのが得意だったこと(新人教育など)
- 趣味で極めたこと(日曜大工、園芸、囲碁・将棋など)
- 人からよく頼りにされたこと(悩み相談、PCのトラブル解決など)
「こんなこと、大したことない」なんて思わないでください。
それは、あなたにとっては当たり前でも、他の誰かにとっては「喉から手が出るほど欲しいスキル」かもしれません。
ステップ2:小さな「お役立ち」を探してみる
棚卸ししたスキルを活かせる場所を、身近なところから探してみましょう。
- 地域で探す
- シルバー人材センターに登録して、植木の剪定や簡単な修繕を手伝う
- 町内会の役員になって、地域のイベントを企画する
- 小学校や学童で、登下校の見守りボランティアや、昔の遊びを教える先生になる
- オンラインで探す
- スキルシェアサイトで、若いビジネスマンの相談に乗る
- 自分の経験をブログやSNSで発信してみる
- クラウドソーシングで、データ入力やアンケート回答など、簡単な仕事を受注してみる
ステップ3:「ありがとう」を素直に受け取る
新しい役割を始めると、必ず誰かから「ありがとう」と言われる瞬間が来ます。
その時、「いやいや、大したことじゃないから」なんて謙遜しないでください。
その「ありがとう」こそが、あなたの心の栄養になり、失いかけていた自己肯定感を満たしてくれる、何よりの特効薬なんですから。
「どういたしまして。また何かあったら言ってね」
そうやって、笑顔で受け取ること。
それが、新しい役割を、あなたの「生きがい」に変えていくための、一番大切なコツです。
FAQ:よくある質問
- Q1. 妻や子供にできることはありますか?
- A1. まずは、一番の理解者になってあげてください。そして、「昔、お父さんの〇〇なところがすごかったよね」と、過去の功績を具体的に褒めてあげてください。それが、本人が自分の「お宝」に気づくきっかけになります。新しい挑戦を始めたら、結果がどうであれ「挑戦していること自体がすごい!」と応援してあげましょう。
- Q2. プライドが邪魔をして、新しいことを始めるのに抵抗があるようです…
- A2. 無理に「ボランティアやったら?」と勧めるのは逆効果かもしれません。まずは、家族の中から「お父さん、これ得意だったよね?ちょっと教えてくれない?」と頼ってみるのがおすすめです。「孫にパソコンを教えてほしい」「棚を作ってほしい」など、本人が得意なことで頼られる経験は、大きな自信につながります。
- Q3. 体力的に、外で活動するのは難しいのですが…
- A3. もちろん、在宅でできる役割もたくさんあります。先述したオンラインでのスキルシェアや、趣味の手芸品をフリマアプリで販売してみるのも良いでしょう。地域の広報誌などに掲載する文章を考える、といった文化的なボランティアもあります。無理のない範囲で、自分にできることを探すのが一番です。
父の背中は、もう小さくなんかない
私の父ですか?
私が帰った後、母から連絡がありました。
町内会の会合に顔を出すようになって、今度、子供向けの簡単な木工教室を開くことになったそうです。
「準備が大変だとか言いながら、なんだか楽しそうよ」
母の声も、心なしか明るく聞こえました。
もし、あなたの身近な人が、あるいはあなた自身が、定年後の言いようのない孤独感に苛まれているなら。
それは、あなたが怠け者だからでも、魅力がなくなったからでも、決してありません。
ただ、人生の新しいステージで、まだ自分の「役割」を見つけられていないだけ。
暇を潰すための趣味探しは、もうやめにしませんか?
あなたのその豊かな経験は、必ずどこかで、誰かが、必要としています。
小さな一歩で大丈夫。
新しい「役割」という名のスポットライトを見つけた時、あなたの背中は、もう決して小さくなんてないはずですから。

