62歳になったばかりの私は、半年前、長年連れ添った夫との熟年離婚を決意しました。財産分与と年金分割で多少のお金は手に入ったものの、これから一人で生きていくという現実が、まるで深い霧のように私の心を覆い尽くしていました。「本当にこの選択で良かったのだろうか…」夜な夜な、天井を見つめながら、後悔と漠然とした不安に押しつぶされそうになる日々でした。
熟年離婚後の「まさか」の現実:年金と貯蓄だけでは足りない?
離婚前は「これで自由になれる」と希望に満ちていましたが、いざ一人になると、想像以上に生活費が重くのしかかってきました。年金分割で収入は減り、パート収入だけでは毎月ギリギリ。「このままでは、老後破産してしまうかもしれない…」という恐怖が、私の心を支配し始めました。スーパーでカゴに入れる食材を選ぶたびに、「これは贅沢かな?」「もっと安いものはないか?」と、ため息ばかり。心の中では、「こんなはずじゃなかった…」と何度も叫んでいました。
節約迷子だった私が陥った「心の枯渇」
焦りから、私は手当たり次第に節約を始めました。電気をこまめに消し、シャワーの時間を短くし、食費は一日500円と決めて、ひたすら切り詰める毎日。最初は「頑張っている」と自分を鼓舞できましたが、すぐに心は疲弊していきました。好きなものも買えず、友人とのお茶も我慢。次第に、誰とも会いたくなくなり、孤独感が募っていきました。ある日、鏡に映った自分の顔を見て、あまりの生気のなさに愕然としました。「これでは、何のために自由になったのか分からない…」私の心は、完全に枯渇していたのです。
転機はFPの友人、田中健太さんとの再会
そんな私を見かねた娘が、偶然、昔からの友人であるファイナンシャルプランナー(FP)の田中健太さんに相談してくれました。数年ぶりに会った田中さんは、私の憔悴しきった様子を見て、優しく話を聞いてくれました。私はこれまでの無計画な節約で心が疲弊していること、そして老後への漠然とした不安を打ち明けました。
田中さんは私の話を聞き終えると、静かにこう言いました。「ねえ、今の節約は、マラソンで水を飲まずに走り続けるようなものだよ。それでは、途中で倒れてしまう。大切なのは、無理なく続けられる『賢い節約』と、心に栄養を与える時間を持つことなんだ。」彼の言葉は、私の凝り固まった心を解き放ってくれました。
田中FPが教えてくれた「60代からの家計立て直し3つの秘訣」
田中さんは、私に具体的な家計の立て直し方を教えてくれました。それは、単に支出を減らすだけでなく、心の豊かさも守るための知恵でした。
1. 「固定費」から見直す節約の黄金ルール
田中さんがまず指摘したのは「固定費」でした。「食費や電気代をちまちま削るより、一度見直せばずっと効果が続く固定費から手をつけるのが鉄則だよ。」
- 通信費: 格安SIMへの乗り換えを勧められました。私は大手キャリアで月8,000円も払っていましたが、乗り換え後は月2,000円以下に。これだけで年間7万円以上の節約です。
- 保険料: 不要な特約を外し、本当に必要な保障だけに見直しました。これも月数千円の削減に繋がりました。
- 住居費: 持ち家なのでローンはありませんでしたが、火災保険や固定資産税の支払い計画を見直すことで、急な出費に備える心のゆとりができました。
2. 「食費」は無理なく楽しく、賢く削減
「食費を削りすぎると、心も体も病んでしまうよ。賢く、美味しく節約しよう。」
- まとめ買いと計画: 週に一度、スーパーでまとめ買いをし、一週間の献立をざっくりと決めるようにしました。無駄買いが減り、食費が月1万円近く減ったのです。
- 旬の食材と特売品: 旬の野菜や特売品を積極的に取り入れ、レシピの幅を広げました。料理が楽しくなり、節約が苦ではなくなりました。
- 作り置き: 時間がある時に多めに作り置きをしておけば、忙しい日も栄養バランスの取れた食事ができます。
3. 「健康」への投資は、最高の節約
「60代は健康が何よりも大切。病気になってしまっては、結局お金がかかるからね。健康維持は最高の節約だよ。」
- 適度な運動: 近くの公園を散歩したり、簡単なストレッチを始めました。体が軽くなり、気分も前向きに。
- 質の良い睡眠: 寝具を見直したり、寝る前のスマホを控えることで、ぐっすり眠れるようになりました。
- 心のゆとり: 無理のない範囲で、趣味の時間や友人との交流も大切にするように。心の健康が、何よりの薬だと実感しました。
節約は「未来の私への投資」だった
田中さんとの出会いから数ヶ月。私は彼の助言を実践し、家計は劇的に改善しました。毎月の支出を把握し、無理のない範囲で節約する習慣が身についたのです。以前のような焦りや不安は薄れ、今は穏やかな気持ちで日々を過ごせています。
節約は、単にお金を減らすことではありませんでした。それは、未来の私を豊かにするための「投資」だったのです。熟年離婚を経験し、一度は人生のどん底にいると感じた私ですが、今は「60代からの人生は、私だけの『第二章』を紡ぐ冒険だった」と胸を張って言えます。もし今、あなたが同じように不安を感じているなら、一人で抱え込まず、信頼できる専門家に相談することをおすすめします。きっと、新しい光が見えてくるはずです。
この記事を書いた人
佐々木 恵子 | 62歳 | 熟年離婚後の家計再生アドバイザー
62歳で熟年離婚を経験。財産分与と年金分割だけでは老後が不安になり、FPの友人の助言を得て家計を徹底的に見直す。現在はパート収入と年金で無理なく生活しながら、地域活動にも積極的に参加し、充実した日々を送っている。自身の経験を通じて、同じ悩みを持つ人々に寄り添い、具体的な解決策を伝える活動をしている。

